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大正〜昭和初期発明家伝39

[承前]

▽内外での評価の差

 内外における八木アンテナの評価の違いは、特許の面にも現れていた。
 当時の特許の権利期間は十五年だったが、重要特許については、申請によって三年ないし十年の延長が認められていた。
 八木はこの延長を申請したが、特許庁の審査官はその重要性を認めず、却下してしまった。
 そのとき担当の審査官はじつは大学時代八木に教わった人物だったというから皮肉である。

 八木アンテナの重要性は、米英の技術者が真っ先に気づいており、軍用のレーダに使われていて、YAGIの名で知られていた。
 捕獲した英軍のノートと捕虜からその話を聞いた日本の技術将校は、何のことか分からず、後で驚いたという、いささか悲しいエピソードが残されている。
 八木自身は知らないでいたとも言われるが、じつは広島・長崎に落とされた原爆にも、この八木アンテナが装着されていた。

 戦後になると、民間用レーダにもテレビ用にも、世界中で利用され、子供でも名を知っている有名なアンテナになった。
 昭和三十六年の段階ですでに、全世界で四千万本使われているというデータが残されている。
 じつに膨大な数である。
 戦後まもなく米占領軍が、八木アンテナ発明者への敬意を表するために八木の家を訪れ、何の金銭的利益も得ていない貧しい生活に驚いたという話がある。

▽特許一覧

 a八木秀次/電波指向方式(第69115号 大正15年)
 b八木秀次/可変指向性電波発生装置(第69252号 大正15年)
 c八木秀次/電波指向方式の改良(第73710号 昭和2年)
 d八木秀次/高周波光力変調方式(第103345号 昭和8年)

 八木秀次はいわゆる発明王ではなく、後半生は教育行政や人材発掘に力を注いでいた。
 だから、特許の数はそう多くはないが、しかし若い時代のこれらの特許は、日本発明史に燦然として輝いている。

[この項つづく]

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第八章INDEX

【大正から昭和へ――憤懣と苦難のはじまり――】(この章の別の題)
000.    はじめにー再開に当たって
001.八・一 日米特許戦争の勃発 蓄電池の先駆者・島津源藏の闘い
       『島津製作所』の発祥
002.      上記の続き
003.      上記の続き
004.    独学で蓄電池製造を開始する
005.      上記の続き
006.      上記の続き
007.    クロライド型の成功と日露戦争への大貢献
008.      上記の続き
009.      上記の続き
010.    特許/発展/危機
011.      上記の続き
012.      上記の続き
013.    世界的大発明への道
014.      上記の続き
015.      上記の続き
016.    日米特許戦争の勃発と最終勝利
017.      上記の続き
018.      上記の続き
019.    栄光の十大発明家に選ばれる
020.      上記の続き
021.八・二 電気の時代の先駆者たち
       電気機械の世界的発明家 山本忠興
022.      上記の続き
023.      上記の続き
024.      上記の続き
025.      上記の続き
026.    テレビ野球中継を成功させた川原田政太郎
027.      上記の続き
028.      上記の続き
029.      上記の続き
030.      上記の続き
031.    日本電子産業の危機を救った天才少年 安藤博
032.      上記の続き
033.      上記の続き
034.      上記の続き
035.      上記の続き
036.      上記の続き
037.    日本電子産業の危機を救った天才少年 安藤博
038.      上記の続き
039.      上記の続き
040.      上記の続き
041.      上記の続き
042.      上記の続き
043.    日本電子産業の危機を救った天才少年 安藤博
044.      上記の続き
045.      上記の続き
046.      上記の続き
047.      上記の続き
048.    世界で最初にFAXを実用化した丹羽保次郎
049.      上記の続き
050.      上記の続き
051.      上記の続き
052.      上記の続き
053.      上記の続き
054.      上記の続き
055.      上記の続き
056.    世界の時計を制覇した古賀逸策
057.      上記の続き
058.      上記の続き
059.      上記の続き
060.      上記の続き
061.    電気の時代のその他の先駆者たち
062.      上記の続き
063.      上記の続き
064.      上記の続き
065.八・三 日本のお家芸を築いた磁石の「鉄人」たち
       KS鋼及び新KS鋼の発明者 本多光太郎
066.      上記の続き
067.      上記の続き
068.      上記の続き
069.      上記の続き
070.      上記の続き
071.    本多光太郎が育てた弟子(一)増本量
072.    本多光太郎が育てた弟子(二)山本達治
073.    MK磁石を発明した磁石の神様 三島七
074.      上記の続き
075.      上記の続き
076.      上記の続き
077.      上記の続き
078.      上記の続き
079.      上記の続き
080.      上記の続き
081.    世界を制覇したフェライトの父 武井 武
082.      上記の続き
083.      上記の続き
084.      上記の続き
085.      上記の続き
086.      上記の続き
087.      上記の続き
088.      上記の続き
089.      上記の続き
090.      上記の続き
091.      上記の続き
092.      上記の続き
093.八・四 立志伝中の発明家たち
       独学で蒸気ボイラーを発明した田熊常吉
094.      上記の続き
095.      上記の続き
096.      上記の続き
097.      上記の続き
098.      上記の続き
099.      上記の続き
100.      上記の続き
101.      上記の続き
102.      上記の続き
103.      上記の続き
104.      上記の続き
105.      上記の続き
106.    明治海軍のボイラーの祖 宮原二郎
107.      上記の続き
108.      上記の続き
109.      上記の続き
110.    ワープロの祖 和文タイプを創った杉本京太
111.      上記の続き
112.      上記の続き
113.      上記の続き
114.      上記の続き
115.      上記の続き
116.    地下足袋を発明して ブヂリストンの祖の一人となった石橋徳次郎
117.      上記の続き
118.      上記の続き
119.      上記の続き
120.    写真植字機を発明して 世界の印刷界に革命をおこした森澤信夫
121.      上記の続き
122.      上記の続き
123.      上記の続き
124.      上記の続き
125.      上記の続き
126.      上記の続き
127.      上記の続き
128.    写植用書体の創造で日本の印刷文字を一新した石井茂吉
129.      上記の続き
130.      上記の続き
131.    レジとカメラの国産化に貢献した間宮精一
132.      上記の続き
133.      上記の続き
134.      上記の続き
135.      上記の続き
136.    曲面印刷の鬼 箱木一郎
137.      上記の続き
138.      上記の続き
139.      上記の続き
140.    その他の立志伝中の発明家たち
        ▽シャープペンシルを発明して企業家になった早川次
141.      上記の続き
142.      上記の続き
143.      上記の続き
144.    ▽地下鉄の父 早川次
145.      上記の続き
146.    ▽「カルピス」を発明した三島海雲
147.      上記の続き
148.      上記の続き
149.    ▽タイガー計算機の生みの親 大本寅治郎
150.      上記の続き
151.    ▽オフセット印刷機の開発者 濱田初次郎
152.      上記の続き
153.      上記の続き
154.    ▽異能の発明家 星一
155.      上記の続き
156.    ▽地中海でも活躍したスキューバの先駆者 大串岩雄
157.    ▽世界のヘリコプター史に残る発明をした大西唯次
158.      上記の続き
159.      上記の続き
160.八・五 その他の立志伝中の発明家たち
        名君であられた昭和天皇
161.      上記の続き
162.    第一回十大発明家
163.      上記の続き
164.    第二回十大発明家
165.      上記の続き
166.      上記の続き
167.      上記の続き
168.      上記の続き
169.      上記の続き
170.    日本特許制度百年記念の十大発明家
171.八・六 明治末から大正期にかけての特許法と実用新案法の内容
        《大正十年特許法》の要点
172.      上記の続き
173.      上記の続き
174.      上記の続き
175.      上記の続き
176.    《大正十年実用新案法》の要点
177.八・七 工業所有権の有事法問題
        スパイ天国と化した日本
178.    軍事上重要な発明の拒絶・制限・収用(甲)
179.      上記の続き
180.    戦時における敵国特許や敵国からの出願に対する措置(乙)
181.      上記の続き
182.    軍事上重要な発明を秘密にする為の措置(丙)
183.    秘密特許の実態と現在の企業の苦心
184.    諸外国における秘密特許の制度
185.      上記の続き
186.      上記の続き
187.      上記の続き
188.    関東大震災への対処と影響
189.八・八 高橋是清の死と高峰讓吉の死 ――過ぎ去った先駆者の時代――
        高橋是清のその後の活躍
190.      上記の続き
191.      上記の続き
192.      上記の続き
193.      上記の続き
194.    高峰讓吉のその後の活躍
195.      上記の続き
196.      上記の続き
197.      上記の続き
198.      上記の続き
199.      上記の続き
200.      上記の続き
201.      上記の続き
202.      上記の続き
203.      上記の続き


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