[トップページ]>[歴史のページ]>[先代旧事本紀 巻第十]
天孫の天饒石国饒石天津彦彦火瓊瓊杵尊(あめのぎしくににぎしあまつひこひこほのににぎのみこと)の孫の磐余彦尊(いわれひこのみこと)は日向の国を出発して倭の国に向かわれた東征の時に大倭の国に海夫(あま)を見つけ、左右の者に
「海中に浮かんでいる者は何者だ」
と言われた。粟忌部首(あわのいむべのおびと)の先祖の天日鷲命(あめのひわしのみこと)を遣わしてこれを調べさせた。還ってきて復命し
「これは、椎根津彦(しいねつひこ)と云うものでした。」
と言い、召して率いてきた。天孫は
「お前は誰だ」
と問われた。答えて
「私は皇祖の彦火火出見尊(ひこほほべみのみこと)の孫の椎根津彦と言います」
と言った。命じられて
「朕を従えて、道案内が出来るか」
と言われた。答えて
「私は、海陸の道を良く知っています。道案内させていただきます」
と言った。天孫は勅して
「椎根津彦を案内人とする」
と言われた。遂に天下を治平され、初めて橿原に都を造られ、天皇位に登られた。勅して功績と能力を褒め国造(くにのみやつこ)を賜った。その後、逆らうものを誅殺し、県主を定められた。これはその始まりで有る。椎根津彦を大倭の国造とした。大倭直(おおやまとのあたい)の先祖である。剣根命(つるぎねのみこと)を葛城国造(かつらぎのくにのみやつこ)とした。葛城直(かつらぎのあたい)の先祖である。彦己蘇根命(ひここそねのみこと)を凡河内国造(おふしかわちのくにのみやつこ)とした。凡河内忌寸(おふしかわちのいみき)の先祖である。天目一命(あめのめひとつのみこと)を山代国造(やましろのくにのみやつこ)とし山代直(やましろのあたい)の先祖である。天日鷲命を伊勢国造(いせのくにのみやつこ)とした。伊賀伊勢国造(いがいせのくにのみやつこ)の先祖で有る。天道根命(あめのみちねのみこと)を紀伊国造(きいのくにのみやつこ)とした。紀河瀬直(きのかわのせのあたい)の先祖である。宇陀県主兄猾(うだのあがたぬしのえうかし)を誅し、弟猾(おとかし)を建桁県主(たけたのあがたぬし)とした。志貴県主兄磯城(しきのあがたぬしえしき)を誅し、弟磯城(おとしき)を志貴県主とした。三人の臣を選んで遣わし、治めるか否かを巡察させた。功績が有るものは、その能力のままに国造を定められた。逆らうものは誅殺し、その功績と能力を測り県主を定められた。任せた国造の数は百四十四国。
・大倭国造(おおやまとのくにのみやつこ)
橿原の帝[神武天皇]の御世に椎根津彦命を初めて大倭国造とした。
・葛城国造(かつらぎのくにのみやつこ)
橿原の帝[神武天皇]の御世に剣根命を初めて葛城国造とした。
・凡河内国造(おふかわちのくにのみやつこ)
橿原の帝[神武天皇]の御世に彦己曾保理命(ひここそほりのみこと)を凡河内国造とした。
・和泉国造(いずみのくにのみやつこ)
元は河内の国で霊亀[元正天皇]元年に割いて茅野監(ちののつかさ)を置く。改めて国とした。元は珍努官(ちぬのつかさ)
・摂津国造(せっつのくにのみやつこ)
法令を批准する摂津職(せっつのつかさ)と言う。初めは京師(みやこ)とし、柏原帝[桓武天皇]代に職を改めて国とした。
・山代国造(やましろのくにのみやつこ)
橿原の帝[神武天皇]の御世に阿多根命(あたねのみこと)を山代国造とした。
・山背国造(やましろのくにのみやつこ)
志賀高穴穂の帝[成務天皇]の御世に曾能振命(そのふりのみこと)を国造に定められた。
・伊賀国造(いがのくにのみやつこ)
志賀高穴穂の帝[成務天皇]の御世に皇子の意知別命(おちわけのみこと)の三世の孫の武伊賀都別命(たけいがつわけのみこと)を国造に定められた。難波の帝[孝徳天皇]の御世に伊勢国に属し、飛鳥の帝[天武天皇]の御世に元の様に割いて置く。
・伊勢国造(いせのくにのみやつこ)
橿原の帝[神武天皇]の御世に天降る天牟久努命(あめのむくぬのみこと)の孫の天日鷲命(あめのひわしのみこと)を勅して国造に定められた。
・島津国造(しまつのくにのみやつこ)
志賀高穴穂の帝[成務天皇]の御世に出雲臣(いずものおみ)の先祖の佐比禰足尼(さひねのすくね)の孫の出雲笠夜命(いずものかさやのみこと)を国造に定められた。
・尾張国造(おわりのくにのみやつこ)
志賀高穴穂の帝[成務天皇]の御世に天別の天火明命(あめのほのあかりのみこと)十世の孫の小止與命(おとよのみこと)を国造に定められた。
・参河国造(みかわのくにのみやつこ)
志賀高穴穂の帝[成務天皇]の御世に物部連(もののべのむらじ)の先祖の出雲色大臣命(いずもしこおのおおおみのみこと)の五世の孫の知波夜命(ちはやのみこと)を国造に定められた。
・穂国造(ほのくにのみやつこ)
泊瀬朝倉の帝[雄略天皇]の御世に生江臣(いくえのおみ)の先祖の葛城襲津彦命(かつらぎそつひこのみこと)の四世の孫の菟上足尼(うちかみのすくね)を国造に定められた。
・遠淡海国造(とおつあうみのくにのみやつこ)
志賀高穴穂の帝[成務天皇]の御世に物部連の先祖の伊香色雄命(いかしこおのみこと)の子の印岐美命(いきみのみこと)を国造に定められた。
・久努国造(くぬのくにのみやつこ)
筑紫の香椎の帝[仲哀天皇]の御世に物部連の先祖の伊香色男命(いかしこおのみこと)の孫の印播足尼(いなばのすくね)を国造に定められた。
・素賀国造(すがのくにのみやつこ)
橿原の帝[神武天皇]の御世に始めて天下を定められたときに従者であった美志印命(みしいにのみこと)を国造に定められた。
・珠流河国造(するがのくにのみやつこ)
志賀高穴穂の帝[成務天皇]の御世に物部連の先祖の大新川命(おおにいかわのみこと)の子の片堅石命(かかしにみこと)を国造に定められた。
・廬原国造(いおはらのくにのみやつこ)
志賀高穴穂の帝[成務天皇]の御世に池田坂井君(いけだのさかいのきみ)の先祖の吉備武彦命(きびのたけひこのみこと)の子の意加部彦命(おかべひこのみこと)を国造に定められた。
・伊豆国造(いずのくにのみやつこ)
神功皇后の御世に物部連の先祖の天○桙命(あめのみほこのみこと)の八世の孫の若建命(わかたけのみこと)を国造に定められた。難波の帝[孝徳天皇]の御世に駿河国に属し、飛鳥の帝の御世に元の様に割いて置く。
・甲斐国造(かいのくにのみやつこ)
纏向の日代の帝[景行天皇]の御世に狭穂彦王(さほひこのおおきみ)の三世の孫の臣知津彦公(おみちつひこのきみ)の子の塩海足尼(しおうみのすくね)を国造に定められた。
・相武国造(さがみのくにのみやつこ)
志賀高穴穂の帝[成務天皇]の御世に武刺国造(むさしのくにのみやつこ)の先祖の神伊勢津彦命(かむいせつひこのみこと)の三世の孫の弟武彦命(おとたけひこのみこと)を国造に定められた。
・師長国造(しながのくにのみやつこ)
志賀高穴穂の帝[成務天皇]の御世に茨城国造(いばらぎのくにのみやつこ)の先祖の建許呂命(たけころのみこと)の子の意富鷲意彌命(おおわしおみのみこと)を国造に定められた。
・无邪志国造(むさしのくにのみやつこ)
志賀高穴穂の帝[成務天皇]の御世に出雲臣(いずみのおみ)の先祖の名は二井之宇迦諸忍之神狭命(ふたいのうかもろおのかむさのみこと)の十世の孫の兄多毛比命(えたもひのみこと)を国造に定められた。
・胸刺国造(むさしのくにのみやつこ)
岐閇国造(ぎへのくにのみやつこ)の先祖の兄多毛比命の子の伊狭知直(いさちのあたい)を国造に定められた。
・知知夫国造(ちちぶのくにのみやつこ)
瑞籬の帝[崇神天皇]の御世に八意思金命(やこころおもいのかねのみこと)の十世の孫の知知夫彦命(ちちぶひこのみこと)を国造に定められた。大神を斎奉る。
注)()内はルビを、[]内は原文で小さい文字で書かれていたものです。